「XYZ」- メグミオギタギャラリーグループショウ -

「XYZ」展 -メグミオギタギャラリーグループショウ- 2012年12月18日(火) - 2013年1月19日(土)

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はじめに


リーマンショック、震災を越えて、ギャラリーの原点を問い直す、アーティスト中村ケンゴディレクションによるグループショウ「XYZ」。 批評的にも、エンターテインメントとしても、また商業的な観点からも、これからの展覧会企画の可能性を提示します。

メグミオギタギャラリーは2007年にギャラリストの荻田徳稔によって銀座5丁目にオープンいたしました。 保井智貴によるオープニングエキシビジョンを皮切りに、上條花梨、中村ケンゴ、土屋仁応といった国内の実力派若手作家や、ロレッタ・ラックス、ビクトリア・ジッドマン、ジュリー・ヘファナンといった日本ではまだあまり見る事の出来ない海外トップアーティストの展覧会を企画してきました。 2010年には銀座二丁目に現在のメインとなる新しいスペースをオープンし、国内海外を問わず数多くのアートフェアにも出展するなど、多様なアーティストを紹介しています。

美術を取り巻く状況は、リーマンショック、東日本大震災を越えて、マーケットのあり方や作品の捉えられ方も大きく変わりつつあります。 そうしたなかで、メグミオギタギャラリーもコマーシャルギャラリーとして、新たな試みの必要性を感じていました。 そこで今回はギャラリー創業の原点へ立ち戻り、自らのアイデンティティを捉え直すためのギャラリーアーティストによるグループショウを企画しました。 展覧会のディレクションは所属作家の中村ケンゴが担当いたします。 中村は今年2月に好評を博したシンポジウム『20世紀末・日本の美術-それぞれの作家の視点から』を開催するなど、ギャラリーを開かれたメディアとして機能させる取り組みを行っています。

グループショウ「XYZ」は、アーティストとギャラリー双方の立場からさまざまなテーマを設定し、批評的にも、エンターテインメントとしても、また商業的な観点からも、単なる作品展示を超えた新しい企画の可能性を提示します。 それぞれの作家の制作に対するアプローチを相対的に見せることによって、作品と現在過去の関係を探る「彫刻・陶芸・立体」と、 イメージと鑑賞者のインタラクティブな関わりを試みる(鑑賞者は作品と一緒に写真を撮り、それをツイッターやFacebookなど インターネットを通じて自由に公開することができます)「絵画・平面/壁面展示」の二つのセクションからなる展示は、それぞれの作品が、根底の部分でどのように関係しているのかを探ります。 また保井智貴、土屋仁応、中村ケンゴ、といった初期メンバー と、3(three)、小村希史といった新しい作家の大作を掛け合わせる空間も作られます。





コマーシャルギャラリーの企画展とは何か、作家と作品、ギャラリストの関係とは、さまざまな軸を設定して、それらを可視化しようとする試み「XYZ」展。

text: 中村ケンゴ(本展ディレクター)
 
そもそもこの企画自体は一年ほど前から考えていたのですが、ギャラリーオーナーの荻田さんに具体的にお話したのは、今年2月に開催したシンポジウム『20世紀末・日本の美術-それぞれの作家の視点から』の後でした。そのとき話したのは、取り扱い作家が増えるなかで、ギャラリーで扱う作家全体での独自性が見えにくくなっていることと、各作家へのマネージメントに余裕がなくなっていることを挙げて、開廊の原点にもどり、あらためてギャラリーのアイデンティティを捉えなおせるようなグループショウを企画しましょう、というものでした。その時点で構想していた展示内容は、各作家の作品を並列に提示し、それらをいくつかの視点で相対化することによって、ギャラリーで扱う作家、作品の独自の傾向を見せることができるのではないか、というものでした。僕としては、とくに彫刻、立体作家に独自の傾向があると感じていたので、その時点では彫刻、立体作家を中心とした展示を行うというイメージがあり、しかもかなり批評的な面を重視したものを考えていました。

しかし、企画を進めることを承諾してもらったのはいいものの、一方で多くのギャラリーと同様に営業的に非常に厳しい状況があるという現実があり、この企画内容だけではたくさんの人に興味を持ってもらうのが難しいことは明白でした。そこでエンターテインメントとしても機能する展示も考えることになり、その結果、もともと構想されていた<彫刻・陶芸・立体作品セクション>と、エンターテインメントを基準にして発想された<絵画・平面/壁面展示セクション>の両輪で企画を進めることになりました。後者は、来場者が作品群を背景に写真を撮れる場所を敢えてつくり、その画像をネットのSNSを通じて広げてもらおうというバイラル・マーケティングの実験を試みるものです。こうして単なる取り扱い作家の作品展示ではなく、さまざまなテーマを設定して、批評的にも、エンターテインメントとしても、またコマーシャルギャラリーの企画展示としても成立するような展覧会ができないかと、スタッフ、作家たちとともに取り組むことになりました。

ここで、コマーシャルギャラリーでの企画展という枠組みのなかで、クリティシズム - エンターテインメント - マーケットを結ぶというようなコンセプトが見えてきました。<彫刻・陶芸・立体作品セクション>では、各作家に、作品制作に対するスタンスを明らかにするべくアンケートを行って、それに基づいたチャート表を作成し、美術史研究者、美術館学芸員を迎えたシンポジウム等を企画して、批評性を重視しつつ、<絵画・平面/壁面展示セクション>では、来場者用に撮影場所をつくり、若手のコレクターたちに関わってもらって、そのプロジェクトを拡げていくためのプレビューパーティを開催することにしました。また、クリスマス期間ということもあり、作品、プロダクトをそのまま持ち帰られる即売コーナーを設置することにもしました。

こうして企画を進めるなかで、クリティシズム - エンターテインメント - マーケットを結ぶというほかに、例えば<彫刻・陶芸・立体作品セクション>では、各作家に、作品制作とその技法や歴史に対する態度と、表現の基礎となる対象を明示させるという意味で、歴史 - 素材 - 技法や、伝統 - 近代 - 同時代、そして表層 - 内面という問題、その作家たちの制作している「美術」というもの、そしてそれらを「展示」する「ホワイトキューブ」という空間、今展では家具のセレクトショップや工房と提携して什器を持ち込んでの展示も考えており、美術 - ART との関わり方という意味での日本 - アジア - 西洋の問題、即売コーナーでいえば、プロダクト - アートワークの違い、また、時代が大きく変わるなかで、作家自身がどのようにサバイブしていくかというなかでの教育 - 就業の問題など、さまざまな軸が見えてきました。こうした多様な軸を意識するなかから、作品と展覧会自体の多角的な見え方を提示しようという意味で、前任スタッフの柳田さんの発案から「XYZ」というタイトルが決まりました(僕はそれ以前に「Intersection(交わる場所)」というタイトルを考えていました)。このサイトのトップページにもある「XYZ」展のロゴにその要素が表されています。これらの要素を内包しつつ、展示、パーティ、シンポジウム、ネットを通じてそれらを可視化していこうというのがこの企画の目論見です。

実際問題として、コマーシャルギャラリーという枠組みだけではなく、予算的にもマンパワー的にも現実的にさまざまな制約があるなかでこの企画は進められています。結果的には多くのテーマやプロジェクトが混じり合い、ギャラリーで扱っているほとんどの作家が出品するというある面では雑多な展示になっていますが、それは従来のやり方ではもはやこの業態は立ち行かないのではないかという、切迫した状況認識のなかでの作家やスタッフの「揺れ」が、そのまま表れているとも言えます。また、混沌とした状態を送り手作り手、鑑賞者それぞれが組み直す余地を残すことも、プレゼンテーションのかたちのひとつとして成立するのではないかとも考えました。僕自身は、作家とディレクターという軸のなかで揺れ動いており、荻田さんもギャラリストと経営者という軸のなかで揺れ動いていると思われます。このように作家 - 作品 - ギャラリストという関係軸も「XYZ」展のテーマのひとつだと企画を進めながら感じています。




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